前項にひきつづき、天ぷらの揚げ方を少々。
煮物は多少煮過ぎても味が大きく変わることはない。角が崩れたり煮汁が煮詰まるなどあっても大勢に影響ない。焼き物は焼き過ぎれば焦げるし、身がぱさつく。焼きが足りなければ生で、ちょうどよいころ合いの時間の幅は少なくなる。これが揚げ物になるとタイミングがさらにシビアになるので日曜料理人には敬遠する向きが多い。
しかしこれもやってみればそう難しいものではない。要は慣れだ。失敗を恐れず挑戦していればそこそこのレベルに達するのに30回もかからないだろう。
以下、天ぷらの揚げ方のヒントを思いつくまま。ただしこれは「しゃりっとした薄い衣」の天ぷらの揚げ方だ。外で食べる分にはどてらを着た伝統的天ぷらもそれなりうまいが、家で再現するのは難しいと思う。(またカロリーが高くなる)
・天ぷら温度計は必須。精密機器ではないから目盛の表示温度が実温度ではない。何度か実際に揚げて目分量でカリブレーションしておく。
・魚介類はできるだけ高温(190度前後)で揚げる。掻き揚げ、でんぷん質の野菜(カボチャ、イモ類)は160度くらいで揚げ始め180度くらいに温度を上げてからっとさせる。
・天ぷら鍋の上で油を切ると温度が下がらないので油切れがよい。
・食事の準備は天つゆ、冷えたビールなどすべてすませ、揚がると同時に食卓に出して食べる。
・野菜は少し甘口の天つゆ、魚介は塩が持ち味を生かすと思うが、これも好み。
・衣は生クリームに牛乳を同量加えたぐらいのぴしゃぴしゃの薄い衣が揚げやすい。粉はなんでもよい。市販の天ぷら粉を使ってもいいし、小麦粉と卵でもいい。実は薄い衣の場合、小麦粉だけでもさほどできは変わらない。
衣をつける前に素材に十分に粉をまぶす。
掻き揚げの場合、素材に粉をまぶした後、卵液を少量かけて手でほぐす。そのあとで衣を加え、ざっと混ぜる。卵液がつなぎになって散りにくくなる。
・火の通りぐあいは、素材の浮きぐあい(火が通ると浮く)、泡、匂い(揚がると香りがしてくる)、箸で触れた感触などで判断する。
・特に重要なのが泡の出方。最初は衣から出る微小な泡が素材を一面につつむ。やがて素材が熱せられると水蒸気が小さな泡になって出る。加熱が進むと大きな泡になり、素材の水分が抜けてくると泡がまた小さくなる。素材の種類と好みによって引き上げるタイミングを覚える。
・魚介類は余熱を考える。キスやメゴチなどは少々揚げ過ぎてもよいが、エビは身が真っ白になっていては揚がりすぎ。プラスチック消しゴムのようにやや半透明な白になるぐらい、ホタテはまわりが2mmほど白くなり、中心が生でほんのり温かく(45度-50度)なるくらいが甘味があっておいしい。
・高級専門店は別として、普通の店では大量の注文を短時間にさばかねばならないので、油の温度を素材ごとに厳密に最適化できない。その点、自家製天ぷらの方にアドバンテージがある。
・最初にイモ、カボチャなどでんぷん質の野菜を最低温で揚げ、次にやや温度を上げてナス、シイタケなど。掻き揚げは低温→高温で揚げる。次に高温のままキス、メゴチなどを揚げ、次にホタテ、イカを手早く揚げて、余熱で火を通す。最後に最高温でエビを一瞬で揚げ、大いそぎで食卓へ。
・あまった天ぷらはラップをかけて冷蔵庫で保存。オーブンレンジで5分ほど再加熱して茶漬けにすると翌日の軽食によい。ナスの天ぷらはコブ出しで煮びたしにしたのもおいしいので大量に揚げておいてもよい。
天ぷらは段取りに慣れれば短時間で調理できるのもよい。あらかじめ蕎麦汁を用意しておけば、前の記事で写真を載せた天ざるなど冷凍庫を開けてブラックタイガーを取り出してから食べ始めるまで15分くらいのものだ。エビ天丼ならもっと早くできる。安い素材を手早くおいしく食べるのに天ぷらは絶好だ。ぜひ挑戦していただきたい。
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