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著者は日本のウェブ出版のパイオニアだ。日本版ワイヤードを創刊したのが94年だからもう15年前になる。紙ではサイゾー、ウェブではGizmodo、MYLOHASなどを出版し、現在でも新しい出版のトレンドの先頭をエネルギッシュに突っ走っている。

実は私も「既成メディア(特に新聞)の将来」について本を書こうと計画しているのだが、これだけ濃い(かつ、おもしろい)メディア論を現場から発信されてしまうと、もう書くことがなくなったか?と心配になる。

新聞社の業績不振、雑誌の相次ぐ休刊など、メディア業界に逆風が吹き荒れるなか、出版はこれからどうなっていくのか?新聞、雑誌はウェブ時代においてもはたして生き残れるのか?インターネット登場以前からコンテンツ製作に携わり、雑誌『ワイアード』『サイゾー』、ウェブの人気媒体『ギズモード・ジャパン』を創刊、眞鍋かをりら有名人ブログ出版をプロデュースしてきたITメディア界の仕掛け人・小林弘人が、世界のウェブメディア最先端情報を紹介しつつ、今後メディアビジネスで成功するため必須のノウハウをおしげもなく公開。福音か、はたまた最後通牒か?次代メディアの運命を左右する衝撃の書。これを読まずして出版、メディア人は生き残れない。

本書の原型は2007年から2008年にかけて日経ビジネス・オンラインに連載された「誰でもメディア宣言」だ。

小林氏は「出版にウェブも紙もない」という事実から出発する。

私が本稿で言うところの「出版」は、「Publishing」、つまり公にするという行為を指します。

テクノロジーの発達によってインターネット/ウェブという新しい巨大な社会的インフラが成立したのだから、当然パブリッシングの全エコシステムも変わらざるをえない。ところが、日本の既成メディアの対応は黒船が来たときの江戸幕府だ。

いままでの「出版」という言葉がすでに死滅しているということで、これからこの「出版」という言葉を再定義する必要があります。、実は水面下では、鳴門海峡も真っ青な渦が巻いています。この渦を看過していると、ここから先の10年、いや、20年先までもが決まってしまうというのにもかかわらず、日本のメディア人の多くはこの事実に気づかないのか、あるいは気づいても、手足を縛られ、なにもできない〔でいます〕。出版社の方と話をしていると、「あなたの会社はなぜ紙とウェブの出版を両方やっているのか?」とか「腰が定まりませんねえ」と言われるのです。

「腰が定まりませんねえ」とは処置なしだ。創業から111年の山海堂から、最近では編物、手芸の老舗、雄鶏社まで「堅実」といわれてきた出版社が次々に倒産している。「腰が定まって」いるというより「座して死を待っている」といったほうがよさそうだ。紙の雑誌の休刊はそのニュースだけで月刊誌が創刊できるかと思うくらい多い。

だが日本ではブログをビジネスとして成功させているパブリッシャーも数えるほどしかない。というより、小林氏のインフォバーン・グループが唯一の例かもしれない。

これは変革期の通例ではある。既存のビジネス・パラダイムはすでに壊れているが、新しいパラダイムは確立してない時期なのだ、ともいえる。

しかし新しいパラダイムがどういうエコシステムになるのか、予定調和的な楽観論は許されないと思う。小林氏も「たぶん誰も儲からない宣言」をしなければならないかもしれないとブログ出版ビジネス化の困難さを強調している。

80年代に始まったマイクロ・コンピュータ革命は「分散、分権」の時代だった。それまで大企業、大学、国家などの大組織がIBMの大型汎用機によって独占していたコンピューティング・パワーが広く個人や家庭に分散、浸透していった。

ところが2000年以降、流れが逆転する。インターネットの高速化とGoogleによる組織化でコンピューティング・パワーは「クラウド」へ集中していく。個人のもつコンピュータはインターネットに接続できてブラウザが作動しさえすればよい。ネットブックというのは、いわば新たな「ダム端末」だ。

ニック・カーは「クラウド化する世界」でコンピューティングは電力、ガス、水道のような汎用的公共サービス(コモディティー化)すると論じた。

私の考は、GoogleやAmazonなどのクラウド・サービスの提供者は電力会社よりも鉄道や航空会社のような公共運輸機関のほうが性格が似ているように思う。

しかし肝心なことは、こうした世界のインフラ・サービスはすでに勝負が決まっている、という点だ。Googeの運用するサーバは世界で300万台といわれる。Googleに対して激しく巻き返しを図っているMicrosoftが今年シカゴに建設したデータセンターはサーバ数55万台規模だ。55万台というのは2007年の日本のサーバ出荷台数に等しい。Google、MicrosoftにAmazonを加えた先行グループにこれから追いつくことは予見しうる将来、誰にとっても困難だろう。

つまりウェブ・ビジネに関してはGoogleなどのプラットフォーム提供者が巨大な利益を独占する。また一般ユーザーも多様なサービスを無料で利用できる。しかし、プラットフォームを利用してビジネスしようとする起業家は「万人の万人に対する戦い」を強いられ、ほとんどは消耗して脱落していく、ということになるおそれが強い。

旧来のメディアが一念発起してウェブ化に立ち上がっても、多くはそのまま「玉砕」ということになりかねない。

もうひとつ、クラウド・コンピューティングの提供者がアメリカ企業である以上、クラウドの利用はコンピューティング・パワーの「輸入」になる。つまりクラウドの利用が爆発すれば日本のIT産業にとっても危機的な状況が予想される。

「夜明け前がいちばん暗い」とはよく言われることだが…はたしてどうだろうか?

と、いろいろなことを考えさせられる本だった。メディアに関係のある向きには必読の1冊なのは間違いない。

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