上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

 「護衛艦あたご漁船清徳丸衝突事件」に対して横浜地方海難審判所の裁決が出た。

裁決主文は以下のように述べて指定海難関係人(一般裁判でいえば被告人)である海上自衛隊に事故の責任を認め、改善勧告を行った。(強調は引用者。以下同様)

海上自衛隊第3護衛隊群第3護衛隊が,あたごの艦橋と戦闘情報センター間の連絡・報告体制並びに艦橋及び戦闘情報センターにおける見張り体制を十分に構築していなかったことは,本件発生の原因となる。

指定海難関係人海上自衛隊第3護衛隊群第3護衛隊(旧第63護衛隊)に対して勧告する。

船の運行の最高かつ最終責任者である艦長(舩渡健1佐)に責任を認めず、当直責任者の水雷長(長岩友久3佐)に事故の責任を認めたものの勧告を行わなかったなど、手ぬるいといえば手ぬるい。しかしあたごが艦長以下、当直体制を遵守せず、レーダーを的確に使用せず、安全意識をまったく欠いたまま混雑する野島崎沖を漫然と航行して惨事を引き起こしたことが公式に認定されただけでも一歩前進ではある。

詳しくは上記リンクの裁決本文を参照していただきたいが、簡単にいえばこうだ。

03:40ごろ、あたご見張員が清徳丸らの白灯を発見したが、当直士官はレーダーで的確に状況を把握せず、CIC(戦闘指揮所)にも連絡せず、次に当直士官にも引き継がなかった。

03時40分C指定海難関係人は,…右見張り員からの報告を受け,艦首右舷33度ないし43度9海里ないし12海里のところにH丸(総トン数4.8トン)…及び清徳丸から成る漁船群の掲げる白灯のうち3個を初めて認め,その灯火の水面上高さなどからこれらを小型船のものと判断し,また,たOPA-6Eで測的を行ったところ,これらが十数ノットの速力で南西方に航走していたにもかかわらず,遠距離で対象物が小さくその映像が安定していなかったこと,レーダーの調節が適切でなかったこと,あるいは十分な時間をかけて継続的に測的を行わなかったことなどから,測的の結果が速力約1ノットと表示されたので,同白灯を操業中の漁船群のものと憶断し,次直へ引き継ぐ必要がないと思い(込んだ)。

次直士官も灯火を確認したが前直の士官同様的確にレーダーを操作せず、行き会い関係にないものと思い込み注意を払わず漫然と自動操舵による航行を続けた。

04時00分B指定海難関係人〔当直士官・水雷長〕は,野島埼灯台から187.5度23.8海里の地点に達したとき,清徳丸が艦首右舷40.5度2.2海里のところに存在し,同船のマスト灯及び紅色舷灯を視認でき,その後同船に明確な方位変化がなく,同船が前路を左方に横切り衝突のおそれのある態勢で接近する状況であったが,依然,I丸やH丸の動向に気を奪われ,清徳丸に対する動静監視を十分に行わなかったので,この状況に気付かず,右転するなどして同船の進路を避けることなく進行した。

要するに清徳丸の灯火を20分も前から視認していたにもかかわらず動静を見誤ったまま突っ込んでいったわけだ。完全な脇見運転、居眠り運転である。

B指定海難関係人は,04時06分わずか過ぎ信号員が「漁船近いなぁ,近い,近い,近い。」と声を発し,右舷ウイングに向かったので,視線を右方に移したとき,清徳丸の紅色舷灯を右舷側近距離に視認し,04時06分少し過ぎ「機関停止,自動操舵やめ。」と令し,続いて月明かりにより同船の船影が見えたので,汽笛吹鳴スイッチを押して短音等を6回吹鳴し,ほぼ同時に後進一杯を令したが及ばず,04時07分少し前野島埼灯台から190度22.9海里の地点において,あたごは,ほぼ原速力のまま,326度を向いたその艦首が清徳丸の左舷ほぼ中央部に後方から47度の角度で衝突した。

結局、海難審判所は海上自衛隊に事故予防の体制づくりが十分でなかったとして改善勧告を行ったが、当直士官(水雷長)始め乗組員は単に「注意」を受けただけだ。人が2人も殺されているのにそんなことでいいのだろうか。

当直士官がトラックの運転手であれば自動車運転過失致死の罪で懲役5年の実刑でもおかしくない。艦長も運行管理者としてやはり刑事民事の責任を問われたケースだろう。(補足:当直士官の水雷長は海難審判で指摘された過失に関して今後、過失致死罪で捜査、起訴される可能あり。)

裁決主文にはなぜか舵を取ったことが記録されていない。衝突の危険を感じたら即座に面舵(右舵)一杯を取るのは操船の基本中の基本だ。舵を取らず漫然と進行したのであれば理解しがたい。

「艦首が清徳丸の左舷ほぼ中央部に後方から47度の角度で衝突した」とある。清徳丸はわずか7.7トンの小型漁船だ。ほんの数メートルずれていればかわせたはずだ。「漁船近い」の声を聞いてから衝突まで1分ある。清徳丸の舷灯を見た瞬間にまず「面舵一杯」を発令していればたとえ分け波、あるいは船腹への接触で転覆させたとしても死亡事故だけは避けられた可能性があるのではないか?

いずれにせよ、あたごの艦長以下、士官のシーマンシップは最低だったという他ない。

問題は単なる海の交通安全ではない。海洋通商国家である日本にとってネイビーの重要さは現在ますます高まっている。莫大な国費を投じたあげく、新鋭主力艦がこんなありさまで有事に対応できるのか? 誰かが改革に向けて強引なリーダーシップを発揮しなければならないところだが…

アップデート:あたご事故で海自への勧告確定へ、2審請求見送り方針と報じられている。

スポンサーサイト
コメント
この記事へのコメント
コメントを投稿する
URL:
Comment:
Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可する
 
トラックバック
この記事のトラックバックURL
http://socweb.blog80.fc2.com/tb.php/351-568bfe75
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
この記事へのトラックバック

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。