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当方、ギャビン・ライアルの熱烈なファンだ。代表作「深夜プラスワン」はあまりに何回も読んだので、冒頭のパラグラフ、It was April in Paris, so the rain wasn't as cold as it had been a month before. Stil, it was too cold for me to walk through it just to see a fashon show. I wouldn't find a taxi until it had stopped raining, and when it stopped I wouldn't need one. ...etcと暗唱できるくらいだ。

しかし、元SAS将校が活躍するアクション・スパイものマキシム少佐がシリーズが終った後、第一次大戦前夜を舞台にした歴史スパイ小説のシリーズにはどうも手が出なかった。実は「深夜プラスワン」を代表作とする初期のハードボイルドものに比べて、マキシム少佐シリーズはいささか迫力不足だったため、がっかりするのがいやであえて無視していたところもある。

しかしたまたまこのシリーズの第2作「誇りからの決別」を古本屋の店先で立ち読みしたところ、圧倒的におもしろい。この正月休みに4作一気読みした。

時代は1913年から14年。重苦しい緊張が高まる第一大戦前夜のヨーロッパが舞台だ。実は英国秘密情報部の歴史は意外に浅く、1909年に誕生したばかりだった。主人公は名門の出身の若き砲兵大尉マシュー・ランクリン。兄の投機の失敗の巻き添えで破産寸前に追い詰められ、ギリシャ軍の傭兵に身を落としてトルコと戦っていたところを誕生したばかりの情報局にスカウトされる。ランクリンをスカウトした局長は風貌といい、ロールスロイスを暴走させる奇矯なキャラといい、実在の初代秘密情報部長官、サー・ジョージ・マンスフィールド・スミス=カミング(Sir George Mansfield Smith-Cumming)海軍中佐(後、大佐)がモデルだ。

ちなみに、英国秘密情報部長官が代々、「チーフ」と呼ばれ、グリーンのインクで"C"と署名する伝統はカミングが始めたもの。ル・カレのジョージ・スマイリーもチーフ代行に就任した際には伝統のグリーンのインクを使っていた。

ランクリン大尉はアイルランドで任務遂行中に知り合ったアイルランド独立運動のメンバー、オギルロイをスカウトしてコンビを組む。局長、ランクリン大尉、オギルロイ、ランクリンの恋人でアメリカの大富豪の娘で自身も父の銀行の経営に携わる才色兼備の女性コリーナ・シェリングがシリーズを通してのレギュラーメンバーだ。

プロットも快調だが、なんといっても読みどころは当時の国際情勢から風俗のディテールまで圧倒的な情報量だ。どこでどうやって調べたのと呆れる。またルイス機関銃、ドイツ軍の軽量山砲などの新兵器も登場する。第2作「誇りからの決別」で重要な役割を果たす実用化間もない飛行機の描写も圧巻。

第4作、「誇りは永遠に」の献辞は、妻、キャサリン・ホワイトホーンに捧げられている。結局これがライアルの遺作となってしまった。もしかすると本人にもその予感があったのかもしれない。

ホワイトホーンは辛口のユーモアで知られる英国では著名なコラムニストだ。「本番台本」の女性弁護士J.B.ペンローズから「深夜プラスワン」のジネット・マリス伯爵夫人、そしてランクリン大尉シリーズのコリーナ・シェリングまで、ライアルの作品を彩る颯爽たる女性たちのモデルはキャサリン・ホワイトホーンに違いない。1956年にPicture Post誌の写真特集「ロンドンの孤独」のモデルをつとめてその知的な美貌がセンセーションを巻き起こしたという。

ここに最近の写真もある。1928年生まれだから、今年は81歳になるはずだが、依然、若々しい。

時代背景から考えてシリーズのクライマックスは第一大戦における秘密情報の活躍だったはず。ライアルの健康があと10年もてばと惜しまれる。70歳は早すぎる死だった。

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