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実は大きなプロジェクトを抱えていて、原稿書きが詰めにさしかかって数週間になる。頂上はそこに見えているのに、最後の急斜面が登れない。食い扶持の翻訳の仕事もおろそかにできないし、七転八倒の日が続く…

こういうときには気があせってさすがに長編小説などには手がのびない。中国古典なんかちょっと気分転換にいいだろう、断片的だしメンドウそうだし、そうそう一度に長く読めるもんじゃないし―と中公文庫版「春秋左氏伝」に手を出したのが運の尽き。これは病みつきになる。

クーデターで追われた王太子を守って脱出する大夫が追っ手に向かって「自分は不仁の者に負けるはずがない。先に射よ」と挑戦する。追っ手は三本の矢を射るがいずれも外れる。そこで大夫は一矢で追っ手を射殺す。(哀公16年)

論語に「公山不狃、費によって反す」と簡単に記されている事件が手に汗握る大活劇になって描写されている。

梟雄、陽虎(陽貨)は魯の実権を握る貴族、季氏のトップを一気に暗殺してクーデターを図るが、相手は寸前で馬車を駆って辛くも味方の屋敷に逃げ込む。陽虎は屋敷を囲んで攻めるも失敗―>

仲間が「追っ手が来ますぞ」と言うと陽虎は「魯の連中、余が出国すると聞いたら殺されずにすんだことを喜んで、余を追いかける余裕などあるものか」

とうそぶいて、行きがけの駄賃に宝倉から(国の象徴の)宝玉・大弓を取り出して亡命する。(定公8年)

「左伝」が各種のイデオロギーに凝り固まった観点から歴史を解釈したがる学派から2000年にわたって偽書だと攻撃されてきた理由がわかる。おもしろすぎるのだ。

周到綿密な小倉注で「左伝」が素人にも読めるようになったのはまことにありがたい。が、それでも人物の名前が難物だ。日本でもたとえば勝海舟は同時代の資料で「安房守、軍艦奉行、陸軍総裁、麟太郎、勝伯爵…」などさまざまに呼び分けられる。注と系図があっても前後の事情がわからないと誰が誰やらなかなか飲み込めない。また編年体のため、一連の事件があちこちにばらばらに分散している。

こういう歴史書はhtml化して、人名、事件にリンクをつけたらたいへん読みやすくなる。CD版があったら5千円くらい出してもいいのだが、出版社に要請しても「電子化するとWinnyに流されるからイヤだ」と言われそうだ。難しいところではある。

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